お葬式やお墓参りなどでは線香をあげることがありますが、「ちゃんとしたあげ方がわからない」とお悩みではありませんか?
「そもそも、なぜ線香をあげるの?」
「線香の正しい本数やマナーが知りたい」
「線香の本数に宗派ごとの違いはある?」
このような線香にまつわる疑問や課題を本記事で解決しましょう。
◆この記事でわかること |
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ぜひ、本記事を活用していただき、故人やご先祖様への大切な供養にお役立てください。
そもそも線香をあげる意味は?
線香をあげる意味は「49日」を境に変わります。
- ●49日までは故人の食事として供える
- ●49日後は故人とつながるため手向ける
それぞれの意味を見ていきましょう。
49日までは故人の食事として供える
仏教において「食香(じきこう)」という考えがあり、故人にとって49日までは「香り」が食べ物。線香をあげることで、故人が食べ物に困らないよう、あの世とこの世をさまよう中でもちゃんと食事ができるようにといった意味をもちます。
49日後は故人とつながるため手向ける
線香の「煙」には、あの世とこの世をつなぐといった宗教的な意味があります。故人が成仏したとされる49日後に線香をあげることで、故人との対話や交流がスムーズになると考えられていることから、お墓や仏壇に手向けられます。

線香は本数によって意味が違う?
線香は、故人の逝去から49日を迎えるまでは宗派を問わず1本をあげます。線香の煙には浄土へ向かう故人が迷わないようにといった道しるべのような意味があるため、何本も立てて故人が戸惑わないようにするためです。
49日後は宗派ごとに立てる線香の本数が違いますので、次章で詳しく確認していきましょう。
宗派ごとの線香の本数と立て方
ここでは、代表的な宗派ごとの線香の本数とあげ方の作法について紹介します。
それぞれの宗派に特有の作法がありますので、その特徴に着目しながら確認しておきましょう。
浄土宗
浄土宗では線香をあげるときに「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」と唱えます。
線香の本数 | 1本~3本程度(49日までは1本) |
あげ方 | ・線香は折ったり横にしたりせず、香炉の真ん中に1本立てます。 ・2~3本あげるときは香炉の真ん中に線香を寄せてから立てます。 |
浄土真宗(本願寺派/真宗大谷派)
浄土真宗では「常香盤」という特殊な長香炉を用いて線香をあげます。
線香の本数 | 1本(49日までも同様) |
あげ方 | ・1本の線香を香炉の大きさに合わせて2~3本に折ります。 ・折った線香を束ね、まとめて火をつけます。 ・線香の燃えている側を左にして香炉に寝かせます。 ・場合によっては1人1本ではなく代表者だけが供香します。 |
真言宗
真言宗では、「仏・法・僧」といった仏教における「三宝」に向けて捧げるという意味から3本の線香をあげるのが特徴です。
線香の本数 | 3本(49日までは1本) |
あげ方 | ・線香を右手で3本とって火をつけます。 ・線香を自分から見て正三角形になるように香炉に立てます。 ・まず1本を奥に、そして左右手前に1本ずつ置きます。 ※複数人の場合は本数や形にこだわらず、左奥辺りから手前に向かって立てていきましょう。 |
天台宗
天台宗では、光明真言と称した特別な念仏を唱えながら線香をあげたり焼香をしたりする場合があります。
線香の本数 | 特に決まりはないはないものの3本というのが通例。49日までは1本。 |
あげ方 | ・線香を右手で3本とって火をつけます。 ・線香を自分から見て正三角形になるように香炉に立てます。 ・まず1本を奥に、そして左右手前に1本ずつ置きます。 ※複数人の場合は本数や形にこだわらず、左奥辺りから手前に向かって立てていきましょう。 |
曹洞宗
曹洞宗では、仏教における「仏・法・僧」の三宝に帰依するという意味で「南無帰依仏(なむきえぶつ)、南無帰依法(なむきえほう)、南無帰依僧(なむきえそう)」と唱えながら線香をあげます。
線香の本数 | 1本(49日までも同様) |
あげ方 | ・線香に火をつけたら、額のところで拈(ねん)じて香炉の奥の方から順に立てます。 ※あげ終えたら、後続の人のため脇にずれて合掌低頭することもあります。 |
臨済宗
臨済宗では、線香をあげながら「観音経」や「大悲心陀羅尼」などの経文を唱えます。
線香の本数 | 1本(49日までも同様) |
あげ方 | ・線香を右手に持ち、ろうそくに近づけて火をつけます。 ・線香は折らずに香炉の真ん中に立てます。 |
日蓮宗
日蓮宗では、線香をあげながら手を合わせて「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」と数回唱えます。
線香の本数 | 1本もしくは3本(49日までは1本) |
あげ方 | ・1本の場合は香炉の真ん中あたりに立てます。 ・3本の場合は、手前に1本、仏様側に2本を立てて三角形にします。 ※地域や寺院によって異なります。 |
線香をあげる場面と正しいあげ方
ここでは、線香をあげる場面ごとの正しいあげ方について紹介します。
- お通夜、告別式などの葬儀
- 仏壇や故人の自宅などの弔問先
- 納骨や年忌法要などでのお墓参り
それぞれの場面における作法を詳しく見ていきましょう。
お通夜、告別式などの葬儀
お通夜では故人の枕元で、告別式では祭壇で線香を焚きます。お通夜から告別式までは長時間にわたるため、遺族は燃焼時間が長い「渦巻き線香」を使用するのが一般的。お通夜では「寝ずの番」といって遺族が故人を夜通し見守る風習があり、ろうそくや線香の火を絶やさないようにするものです。
~参列者の場合~ |
・棒状の線香をあげる場合は、祭壇の前で線香に火をつけ、香炉に線香を立てて合掌します。 |
・抹香(まっこう)で焼香をする場合は、右手の親指・人差し指・中指の3本でつまんで香炉にくべます。 |
線香の本数や立て方、焼香のやり方は宗派によって異なります。故人の宗派に合わせるか、特に指定がない場合は自分の属している宗派に合わせるかなど、あげ方は参列予定の弔事に合わせましょう。
無宗派の場合は喪主や施主、会場スタッフなどに確認するとよいでしょう。
仏壇や故人の自宅などの弔問先
葬儀の後や法要など弔問先で線香をあげるときは数珠をもち、遺族への一礼や故人への合掌などの流れに沿って線香をあげます。
~線香のあげ方~ |
・左手に数珠を持ちます。 ・お仏壇の前に座布団がある場合は、座布団の手前で遺族に一礼します。 ・お仏壇の正面に座ったら一礼して合掌します。 ・マッチかライターでろうそくに火をつけてから線香に火を移します。 ・線香の火は手であおいで消すか、線香を軽く振って消します。 ・香炉に線香を立てます。※浄土真宗では「常香盤」という長香炉に寝かします。 ・おりん(音を鳴らす仏具)を一度鳴らしてから合掌します。 ・お仏壇に一礼し、座布団から降りて少し下がり、最後に再び遺族に一礼します。 |
線香の本数や立て方、は宗派によって異なりますので、あげ方がわからないときや無宗派の場合は喪主や施主に確認するとよいでしょう。
特に指定がなく特定の宗派に属している場合は自分の宗派に合わせてもかまいませんが、設置されている香炉の形状や参列者数なども考慮しながらスムーズに行えるよう配慮するのもマナーです。
納骨や年忌法要などでのお墓参り
お墓では、一束の線香を参列者で分けてあげるのが一般的です。
~線香のあげ方~ |
・マッチかライターでろうそくに火をつけてから線香に火を移します。 ・左右両側に燭台がある場合は、右側のろうそくから火を移します。 ・線香の束を故人との関係が深かった人から分けていきます。 ・線香を受け取ったら真っ直ぐ立てるか、横に寝かせるか香炉の形状に合わせます。 |
お墓の形状や弔事の規模などによっては束のまま手向けてもかまいません。ただ、お墓によっては香炉部分が薄くなっていて、線香を束のまま手向ける炎が出たときに石が割れる可能性がありますので注意しましょう。
線香をあげるときの注意点
お葬式や弔問、お墓参りといった場面で線香をあげるときは、マッチやライターで直接火をつけないようにしましょう。まず、ろうそくに火をつけてから線香に火を移すのが正しいマナーです。
線香についた火は燃えないよう軽く手であおいで消します。ろうそくの火を消すときも専用の道具を使って消し、いずれの場合も息を吹きかけて消さないようにしましょう。
まとめ
故人のため線香をあげる意味は「49日までは故人の食事として供える」、「49日後は故人とつながるため手向ける」と49日を境にして変わります。また、線香をあげる側にとっては空間の浄化や心身の清浄など「穢れ」を祓う目的もあります。
線香は、宗派ごとに本数や作法が違いますし、あげる場面によっては種類やあげ方も違いますので、しっかりマナーを押さえておきましょう。
ここで、宗派ごとの本数と作法をおさらい。
宗派 | 本数 | あげ方 |
浄土宗 | 1本~3本程度 | 線香は折らずに香炉の真ん中に立てる。 |
浄土真宗 | 1本 | 線香を2~3本に折り香炉に寝かせる。 |
真言宗 | 3本 | 自分から見て正三角形になるように香炉に立てる。 |
天台宗 | 3本が通例 | 3本の場合は自分から見て正三角形になるように香炉に立てる。 |
曹洞宗 | 1本 | 香炉の奥の方から順に立てていく。 |
臨済宗 | 1本 | 線香は折らずに香炉の真ん中に立てる。 |
日蓮宗 | 1本もしくは3本 | 1本の場合は香炉の真ん中あたりに立てる。 3本の場合は手前に1本、奥に2本を立てて三角形にする。 |
そして、線香をあげるときはマッチやライターで直接火をつけず、ろうそくに火をつけてから線香に火を移すのも正しいマナーです。
ぜひ、線香の基礎知識として本記事を活用していただき、お葬式や弔問、お墓参りといった弔事での供養にお役立てください。
尚、お葬式や法要などで役立つ「焼香」については詳しく書かれた関連記事がありますので、よければ合わせてご参照ください。