結納は古くからの伝統儀式なため、何を用意したらいいのか、どのような決まりがあるのか悩みますよね。
「結納品の内容が知りたい!」
「結納品の正しい渡し方は?」
「地域や形式の具体的な違いって?」
「自分たちの結納のベストな方法は?」
このような要望や疑問を解決するため、本記事では以下の内容で解説します。
- 結納の地域や形式での違い
- 結納品の内容の違い
- 目録と受書の受け渡しの違い
- 結納品の飾り方の違い
- 結納金の相場の違い
- 結納返しの内容の違い
本記事を参考に準備をすすめれば、初めての結納でも失敗なく運べますよ!
結納の地域や形式での違いとは?
結納には地域や形式によって品物の種類や数など違うほか、結納品の飾り方、受け渡しの方法なども異なります。
- 結納品の内容の違い
- 目録と受書の受け渡しの違い
- 結納品の飾り方の違い
- 結納金の相場の違い
- 結納返しの内容の違い
ここでは、まず地域や形式による根本的な違いを簡単に見ておきましょう。
関東と関西での違いは「文化」による
日本における結納の発祥は仁徳天皇の時代とされ、もともとは皇族や貴族など位の高い人々の間で行われていましたが、時代とともに身分や地域を超えて広まりました。
結納は大きく関東式と関西式に分けられますが、武家の婚約にならった関東式では男性と女性を「ほぼ同格」とするため両家で相互に結納品を受け渡します。
一方、関西では公家の婚約を基本とした形式が継承され、結納品は男性側から女性側へ贈るのみ。
つまり、関東と関西での違いは結納という伝統儀式のもとにある「文化」の違いそのものを引き継いでいるのです。
正式結納と略式結納の違いは時代の「変化」で
結納の形式には「正式結納」と「略式結納」があり、より伝統的な格式をもつのが正式結納です。
現在ではライフスタイルの変化やカップルの居住地の距離感など、昔とは違った生活環境の中で結納を行うため簡略化がすすみ、略式結納を婚約の儀式とするケースも増えています。
正式結納と略式結納の大きな違いは「仲人の有無」「両家の顔合わせの有無」です。
また、「結納品の数」にも差がありますので、詳しくは次の章で結納品の内容について見ていきましょう。
結納品の内容について
結納品は縁起よくするため、一般的に割り切れない「奇数」で用意します。
関東式と関西式では品物の数や種類が違いますので、それぞれ確認していきましょう。
さらに略式結納の場合はどうなるのか解説しますので、正式結納との違いも参考にしてください。
関東式の結納品
- 目録(もくろく)……結納品の明細書のようなもの、「茂久録」とも。
- 長熨斗(のし)……あわびを延ばしたもので「長く延ばす」の意味から不老長寿の象徴。
- 御帯料(おんおびりょう)……結納金のこと。
- 勝男節(かつおぶし)……鰹節のこと、男性の強さを意味する。
- 寿留女(するめ)……スルメのこと、女性の品性を意味する。婿養子では「寿留芽」に。
- 子生婦(こんぶ)……昆布のこと、子宝と子孫繁栄を願う。婿養子では「昆布」に。
- 友白髪(ともしらが)……白い麻糸のこと、ともに白髪の生えるまで夫婦円満に、の意味。
- 末広(すえひろ)……白い扇子のこと、家運の繁栄を願う。
- 家内喜多留(やなぎだる)……お酒の入った柳樽のこと、酒肴料。
正式結納での結納品は「御帯料(おんおびりょう)」と呼ばれる結納金ほか9品目です。
関東式を採用する東海地方の一部では、反物でできた宝船や鯛などの「呉服細工」を飾るケースもあります。
関西式の結納品
- 熨斗(のし)……あわびを延ばしたもので「長く延ばす」の意味から不老長寿の象徴。
- 末広(すえひろ)……白い扇子のこと、家運の繁栄を願う。
- 小袖料(こそでりょう)……結納金のこと。
- 柳樽料(やなぎだるりょう)……酒代のこと。
- 松魚料(まつおりょう)……魚料のこと。
- 高砂(たかさご)……老夫婦の人形のこと、ともに老いるまで添い遂げられるよう、の意味。
- 結美和(ゆびわ)……婚約指輪のこと。
- 子生婦(こんぶ)……昆布のこと、子宝と子孫繁栄を願う。婿養子では「昆布」に。
- 寿留女(するめ)……スルメのこと、女性の品性を意味する。婿養子では「寿留芽」に。
関西では正式結納の場合も5品目以上なら行えます。
ちなみに関西式を基本にした九州地方では「御知家(お茶)」が追加されたり、「祝鯛(いわいだい)」として「松魚料(まつおりょう)」の代わりに現物の鯛である「家慶鯛(かけいだい)」が用意されたりします。
略式結納の結納品
略式結納では「7品目」「5品目」「3品目」となります。
基本的には正式結納で用意するものを奇数になるように組み合わせるのですが、関東式でも関西式でも組み合わせに決まりはありません。
地域性や家の慣わし、お店が提供するセットによっても組み合わせの内容は変わります。
結納品の飾り方について
結納品の飾り方も関東式と関西式で異なります。
ここでは、関東式と関西式の正式結納で飾られるスタイルを見ていきましょう。
関東式は結納品を重なり合わせて並べる
出典:結納ドットコム
ふたりの結婚生活や両家の未来に「重なる幸せを」との意味から、結納品を台の上で重なり合わせるのが関東式。
並べる順番は目録のままで、右から「目録(もくろく)」→「長熨斗(のし)」→「御帯料(おんおびりょう)」→「勝男節(かつおぶし)」→「寿留女(するめ)」→「子生婦(こんぶ)」→「友白髪(ともしらが)」→「末広(すえひろ)」→「家内喜多留(やなぎだる)」となります。
略式結納で数を減らしても、基本的に目録に沿った飾り方は同じです。
※結報品の並べ方は地域によって異なる場合もあります。
関西式は結納品ごとに台に乗せて並べる
出典:松美堂結納品店
関西式では赤い毛氈(もうせん)を引き、上段に右から「松」=「小袖料(こそでりょう)」→「竹」=「柳樽料(やなぎだるりょう)」→「梅」=「松魚料(まつおりょう)」を、中段に右から「末広(すえひろ)」→「高砂(たかさご)」→「熨斗(のし)」を、下段に右から「寿留女(するめ)」→「結美和(ゆびわ)」→「子生婦(こんぶ)」の並びです。
目録は毛氈の上ではなく、中央の手前に置きます。
※結報品の並べ方は地域によって異なる場合もあります。
目録と受書について
結納品の受け渡しには「目録」と「受書」が必要です。
目録は結納品の内容を示したもので、受書は結納品を受け取った記として返す受領書のようなもの。
目録や受書にも関東式と関西式での違いがありますので、一般的なテンプレートを元に解説します。
- 関東式と関西式の目録の違い
- 関東式と関西式の受書の違い
- 関東式と関西式の受け渡しの違い
それぞれ詳しく見ていきましょう。
関東式と関西式の目録の違い
目録が関東式と関西式で違うのは、品目の数え方です。
関東式は「目録」もカウントする
まず関東式の目録を見本にして、各項目を紹介します。
- 目録は「茂久録」と書く場合もあります。
- 長熨斗を高い位置に、ほかの品目は箇条書きします。
- 「右幾久敷御目出度 御受納賜度候也」=「どうぞ右の品をお受け取り下さい」
- 日付は「○月吉日」と書くのが一般的。
- 贈る側の名前。
- 贈る先の名前。「様」のほか「殿」とするのも可。
関東式では「目録」「長熨斗」を含めて9品目とします。
関東式特有の文化として、結納にふさわしい「祝い言葉」として9品目を揃えていない場合でも上記のように書くケースが。
すべての品目で「ふたり(男女)が絆で結ばれて子宝に恵まれ、多幸に暮らし、健康長寿で年老いるまで添い遂げられるよう、酒と肴で婚約の儀式を祝いましょう」という意味になるからです。
関西式は「目録」をカウントしない
次に関西式の目録を見ると、関東式との違いは2つ。
関東式では一段高く書かれていた「熨斗」もほかの品目と同じように記されています。
また、関西式では「目録」を数に含まず、それ以外で9品目になるのも特徴です。
簡略式では品目を書かない
どの結納でも対応できる簡略式なら、品目の明細は書かず「御結納の品 一式」とするだけです。
マナーとしての差はありませんが、ケースバイケースでの使用になるため、結納品を購入する際に確認しておきましょう。
関東式と関西式の受書の違い
受書が関東式と関西式で違うのは、品目の書き方です。
関東式は「長熨斗」を高くして書く
まず関東式の受書を見本にして、各項目を紹介します。
- 表題は「受書」とします。
- 長熨斗を高い位置に、ほかの品目は箇条書きします。
- 「右幾久敷御目出度 御受納仕り候也」=「たしかに右の品を受け取りました」
- 日付は「○月吉日」と書くのが一般的。
- 受け取った側の名前。
- 渡す先の名前。「様」のほか「殿」とするのも可。
受書は「目録の内容を確認して受け取りました」の意味ですので、目録に書かれている品目を明細として記します。
関西式は「熨斗」から順に箇条書きする
関東式との違いは一段高く書かれていた「熨斗」もほかの品目と同じように記すこと。
それ以外の項目については関東式と変わりません。
明細がわからない場合は簡略式
もし、結納品の明細がわからない場合は「御結納の品 一式」とだけ書きます。
また、先方が目録を用意しているか不明な場合も簡略式の受書でかまいません。
関東式と関西式の受け渡しの違い
目録は結納品を贈るときに、受書は結納品を受け取ったときに先方に渡しますが、関東式と関西式で結納品の受け渡し方が違うため目録や受書の準備も変わります。
~関東式~
- 男性側から結納品と目録を女性側に渡す。
- 女性側が結納品を受け取り男性側に受書を渡す。
- 女性から結納品と目録を男性側に渡す。
- 男性側が結納品を受け取り女性側に受書を渡す。
関東式では男性側も女性側も、それぞれ「結納品」「目録」「受書」を用意します。
~関西式~
- 男性側から結納品と目録を女性側に渡す。
- 女性側が結納品を受け取り男性側に受書を渡す。
関西式では結納品を贈るのは男性側のみのため、男性側は「結納品」「目録」を、女性側は「受書」を用意します。
地域によっては女性側から男性側へ渡す「受書」を省略する場合もありますので確認しておきましょう。
結納金の相場について
結納金の額は「月収の3か月分」が相場ですが、関東では100万円前後なのに対して関西では100万円〜150万円と相場より高くなる傾向です。
贈る側の収入や貯蓄、社会的地位などによっても差が出ますが、キリのよさから「一本」として100万円が好まれたり、割り切れない奇数で縁起をかつぐため50万円、70万円にしたり、「末広がり」の意味になるため80万円にしたりと個々のケースで変わります。
また、関東式では「半返し」を想定して結納金を半額にし、結納返しを省略するケースも。
結納金の相場、結納金の包み方、紙幣の種類など、結納金に関しては詳しく書かれた記事がありますので、よければ合わせてお読みください。
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結納返しの内容について
結納返しとは、受け取った結納品へのお礼として返す現金や品物のこと。
現在は簡略化がすすみ、結納の当日に行うケースが増えていますが、結納日と分ける場合は結婚式の2週間前までに行うのが一般的です。
結納返しも関東式と関西式とで違いますから、それぞれ内容を見ていきましょう。
関東式の結納返し
- 目録(もくろく)
- 長熨斗(ながのし)
- 御袴料(おんはかまりょう)※現金
- 勝男節(かつおぶし)
- 寿留女(するめ)
- 子生婦(こんぶ)
- 友白髪(ともしらが)
- 末広(すえひろ)
- 家内喜多留(やなぎだる)※現金
関東式の結納返しは結納品と変わりません。
ただ、「半返し」が慣わしのため現金は結納で受け取った額の半額程度になります。
※地域性や家のしきたりによって異なります。
関西式の結納返し
- 目録(もくろく)
- 熨斗(のし)
- 末広(すえひろ)
- 御袴料(おんはかまりょう)※現金
- 柳樽料(やなぎだるりょう)※現金
- 松魚料(まつおりょう)※現金
関西式の結納返しは「しない」「1割程度」が古くからの慣習です。
関西では男性を立場的に優位に見る公家文化が受け継がれたためとされています。
※地域性や家のしきたりによって異なります。
結納返しの相場や品物などについては詳しく書かれた記事がありますので、よければ合わせてお読みください。
結納のスケジュールが決まったら、結納返しをどうするか悩みますよね。いつ、何を準備すればいいのか、予算なども気になるのではないでしょうか。「そもそも結納返しって?」「結納返しに準備すべきものは?」「どれくらいの費用がか[…]
どちらの地域の結納にするか迷ったら?
現在では生活環境の変化により、実家と居住地が違ったり、男性と女性で地元が関東⇔関西に分かれていたりして、「どの地域の結納を採用するか」に悩むカップルもすくなくありません。
一般的には「実家」のある地域を優先させますが、お互いの実家が別地域ならば「話し合って決める」のがベターです。
- 結納品の内容は関東式?関西式
- 結納品の贈り方は男性のみ?女性も?
- 結納返しはどうする?返すなら割合は?
ふたりだけで悩まず、両親や祖父母など家族にも相談しながらベストな方法を採用しましょう。
結納は地域別・形式別の違いに注目して準備を
結納には、関東式と関西式という地域性のほか、正式結納と略式結納という形式の違いがあります。
時代とともに庶民の間にまで広まった伝統儀式なため地域ごとの文化や風習が受け継がれ、現在の生活様式に合った形での簡略化もすすんだためです。
ここで改めて結納の「違い」をおさらいしておきましょう。
- 結納品の内容の違い
- 目録と受書の受け渡しの違い
- 結納品の飾り方の違い
- 結納金の相場の違い
- 結納返しの内容の違い
一般的な決まりや作法のほか、さらに絞られた地域での慣わしもありますし、家ごとの考え方やしきたりなども関係します。
また、ふたりの実家が関東と関西で分かれている場合は「どちらの形式を採用すればいいか」と悩むかもしれません。
結納は「家」と「家」を結びつける婚約の儀式ですから、ふたりだけで悩まずに家族とも相談してベストな形で行ってくださいね。